第1章 「辞めたい」の正体を言葉にしてみる
「もう辞めたいな…」と思ったとき、私たちはつい転職サイトを眺めたり、「今すぐ退職」といった言葉を検索したくなります。でも、ここで一度立ち止まってほしいんです。
まずやることは、“衝動を抑え込むこと”ではなく、心の中のモヤモヤをちゃんと言葉にしてあげること。ここを飛ばしてしまうと、職場を変えても同じことでつまずいてしまうことが多いんですよね。
1枚の紙からでいい。「本音のメモ」を作る
やり方はシンプルです。紙かノートを1枚用意して、上の方に大きく
「いまの仕事で、イヤだと感じていること」
と書きます。あとは思いつくまま、箇条書きで書き出していきます。
- 上司との相性が合わない
- 仕事内容にやりがいを感じない
- 給料が生活と気持ちに見合っていない気がする
- 残業が多くて自分の時間がない
- 会社の方針にどうしても納得できない …など
うまく言葉にしようとしなくて大丈夫です。
「なんかムカつく」「しんどい」「虚しくなる」みたいな、ざっくりした表現でOK。
「会社が悪い」ではなく「自分がどう感じているか」で書く
ここで意識してほしいポイントがひとつ。
- ×「上司が最悪」
○「上司の××という言い方をされると、自分は萎縮してしまう」 - ×「ブラック企業だからムリ」
○「この勤務時間だと、体力的にも精神的にも持たないと感じている」
こんなふうに、
誰が悪いかを決めるためではなく、自分の心の状態を説明してあげる感覚で書いていきます。
「会社が悪い」「環境が悪い」とまとめてしまうと、
自分が何に傷ついているのか、どこから変えていけばいいのかが見えません。
だからこそ、「自分はこう感じている」という主語で書くことが大事なんです。
「本当はこうなりたい」という理想もセットで書く
ネガティブな気持ちを書き出せたら、次はその横に
「本当はどうなりたいか」
も書いてみます。
- 上司との相性が合わない
→ 萎縮せずに相談できる人と働きたい - 残業が多くて自分の時間がない
→ 平日に1〜2時間は自分の時間を確保できる働き方がいい - 会社の方針に納得できない
→ 自分の価値観と近い仕事に関わりたい
この「イヤだ」と「本当はこうなりたい」のセットが増えていくほど、
あなたの中で、少しずつ道筋が見えてきます。
書き出すことで、「選べる自分」になっていく
こうして本音を書き出しておくと、
- 転職で解決できるのか
- 部署異動や働き方の調整で済むのか
- そもそも今の仕事から離れたほうがいいのか
が、感情だけでなく言葉のレベルで見えてきます。
第1章のゴールは、「すぐ辞める」と決めることではありません。
「自分は何に傷つき、何を求めているのか」を知ること。
第2章 今すぐ辞めても大丈夫?「お金」と「生活」をざっくりチェック
「もう限界…今すぐ辞めたい」
そう思ったとき、いちばん頭をよぎるのはきっと、
「お金、大丈夫かな…」
ここが不安なままだと、どれだけ心がしんどくても
「でも、生活が…」とブレーキを踏み続けることになります。
だから第2章では、細かい家計簿ではなく
“生きていくために、最低いくら必要か” をざっくり掴むことをやります。
完璧じゃなくていいので、「だいたいこれくらい」を数字で見える化していきましょう。
① 毎月いくらあれば暮らせるかを書き出す
紙かメモアプリに、毎月の固定費をざっと並べてみます。
- 家賃・住宅ローン
- 光熱費(電気・ガス・水道)
- スマホ・ネット
- 食費
- 交通費
- サブスク(動画・音楽・アプリなど)
- 保険料 …など
ひとつひとつ、「だいたいこのくらいかな?」でOKです。
細かい誤差よりも、全体のサイズ感が分かることが大事。
合計した金額が、
あなたが「とりあえず生活するために必要なお金(1ヶ月分)」になります。
② 貯金・失業給付・頼れる先を確認する
次に、“入ってくる可能性のあるお金” を見ていきます。
- 手元の貯金はいくらあるか
- 会社を辞めたあと、**失業給付(失業手当)**はもらえそうか
- 実家に戻る、家賃だけ親に相談する…など、頼れる選択肢はあるか
ここも、正確な数字じゃなくて大丈夫です。
たとえば、
- 貯金が80万円ある
- 失業給付が月10万円くらい出そう
- 実家に戻れば、家賃はほぼ0円にできる
など、「使えるカード」を一度テーブルの上に全部出してみるイメージです。
③ 「無収入でも何ヶ月いけるか」をざっくり計算してみる
ここまで出した数字を、ざっくり組み合わせます。
- 1ヶ月の生活に必要なお金:15万円
- 手元の貯金:60万円
だとしたら、
60万円 ÷ 15万円 = 4ヶ月分
「今すぐ辞めても、4ヶ月はなんとかなる」
という目安が見えてきます。
失業給付や、パート・バイトで少しでも収入を足せば、
この「4ヶ月」はさらに伸びていきます。
この “だいたい何ヶ月” が分かるだけで、
- もう少し準備してから辞めよう
- 貯金が○○万円まで貯まったら退職していい
- このタイミングなら動いても大丈夫そう
と、**感情ではなく “計画” で考えられるようになります。
不安の正体が見えると、心は少しラクになる
お金の不安って、実は
「いくら足りないのか分からない不安」
であることが多いです。
だからこそ、完璧じゃなくていいので一度数字にしてみることが大切。
- 「思ったよりなんとかなるかも」
- 「まだ今は辞めない方が安心だな」
どちらの結果になっても大丈夫です。
どちらにしても、“選べる自分” に一歩近づいているから。
第3章 一人で抱え込まない。「会社の外」の人に相談してみる
- ここまでで、
第1章では「なぜ辞めたいのか?」を言葉にして、
第2章では「お金と生活」の見通しをざっくり立ててきました。 - 第3章で大事にしたいのは、ここです。
一人で決めないこと。
退職って、どうしても「自分の問題だから自分で決めなきゃ」と思いがちです。
でも、心がいっぱいいっぱいのときに、冷静な判断を一人だけで下すのは、とても難しいもの。
だからこそ、自分以外の視点を借りることが大事になってきます。
「会社の外」の人に話してみる
相談相手としておすすめなのは、こんな人たちです。
- 友人・家族
- 元同僚・前職の上司、信頼できる先輩
- キャリア相談・転職エージェント
- 心がしんどいときは、カウンセラーや専門窓口
ここでポイントなのが、
**「会社の内側の人だけで完結しない」**ということ。
同じ会社の上司や同僚は、どうしても会社寄りの視点になりがちです。
- 「そんなのどこ行っても一緒だよ」
- 「もう少し頑張ったら?」
と、“引き止める言葉”が出やすい立場でもあります。
もちろん、あなたを心配して言ってくれている場合もありますが、
結果的にあなたの気持ちを押さえ込む方向に働いてしまうことも少なくありません。
一方で、「会社の外」の人は、もっとフラットに状況を見てくれます。
- 「それ、普通に環境が悪いよ」
- 「あなたの強みなら、こういう働き方もありじゃない?」
と、自分では思いつかなかった選択肢を見せてくれることも多いです。
話すときのコツは「結論」じゃなくて「今の気持ち」を伝えること
相談するときは、
「辞めるべきか、辞めないべきか、どっちが正解?」と答えを求めるよりも、
- 今どんなことにしんどさを感じているか
- どんなときに「辞めたい」と強く思うのか
- 本当はどう働けたら嬉しいのか
といった、自分の今の状態や本音を素直に話してみるのがおすすめです。
すると相手も、
- 「それはあなたが悪いんじゃなくて、環境の問題だね」
- 「この部分は今の会社でも工夫できそうじゃない?」
- 「それなら、こういう働き方を調べてみるのもアリかも」
と、具体的な視点を返してくれやすくなります。
専門家に頼るのも「逃げ」じゃなくて「戦略」
心や体がかなり限界に近いときは、
カウンセラーや専門窓口に頼る選択も、ちゃんと「アリ」です。
- 頭の中がぐちゃぐちゃで整理できない
- 涙が勝手に出てくる
- 朝になると体が動かない
こんなサインが出ているときは、
もはや「頑張り方を変える」だけではカバーしきれない状態かもしれません。
プロの第三者に話すことは、
逃げではなく、自分の人生を守るための戦略です。
3つのステップで「ちゃんと選べる自分」へ
ここまでの3ステップをもう一度整理すると、
- 気持ちを整理する(理由の言語化)
- 現実を確認する(お金と生活)
- 視点を増やす(外の人に相談)
「辞める/辞めない」を、今この瞬間に決める必要はありません。
大事なのは、感情だけで振り回されるでもなく、
不安だけでガマンを続けるでもなく、
自分でちゃんと選べる状態をつくること。
この記事が、そのための小さな足場になれば嬉しいです。