自民党の各委員会から高市総理へ提出された「7つの提言」。これらを「予算を勝ち取るための儀式」として見過ごすのは簡単です。しかし、提言の内容をよく見ると、日本が抱える「切実な現実」が浮かび上がってきます。
政治は理想を語るだけでは動きません。現場で何が起き、何が日本の足を引っ張っているのか。その「問題」と、それに対してどのような「対策」が必要なのかを、厳しく見つめ直します。
1. 農業:農村の衰退という「現実」への対峙
【問題】 担い手不足と高齢化で、耕作放棄地が拡大。これまでの「お米を作れば守られる」という補助金制度が、かえって農地の効率的な活用を阻害している。
【対策】 お米一辺倒からの脱却。麦・大豆・米粉用米など、需要がある作物の生産を後押しし、大規模で稼げる農家を優先的に支援する。
2. 林業:放置された森という「時限爆弾」
【問題】 手入れがされず放置された人工林が、土砂災害のリスクを高め、経済的な価値も生んでいない。
【対策】 デジタル技術を活用した林業の効率化と、花粉症対策の加速。木材を「守るべき資源」から「稼げる資源」へ変える。
3. 原子力:エネルギー安定供給の「崖っぷち」
【問題】 老朽化する設備と、サイバーテロや災害に対する防災の遅れが、原発活用への不信感を招いている。
【対策】 次世代炉への対応を含めた安全規制の再構築。万全の防災インフラを整備し、安定的で安い電力を産業界へ供給する。
4. 経済安保:世界から「引き抜かれる」日本の技術
【問題】 重要な技術やサプライチェーンが、他国の経済的圧力やサプライチェーンの脆弱性によって危機にさらされている。
【対策】 国が関与して供給網を強靭化する。日本の技術を「守る」だけでなく、国際的な優位性を保つための戦略的投資を断行する。
5. 宇宙:チャンスを逃し続ける「機会損失」
【問題】 日本には高い技術力があるのに、ビジネスへの転換が遅く、海外に市場を奪われている。
【対策】 宇宙を「研究対象」から「商用ビジネス」の主戦場へ。2030年代に市場規模を2倍にするための民間支援を強める。
6. 中小企業:価格転嫁できない「搾取構造」の解消
【問題】 大企業の下請けである中小企業が、原材料費や人件費の上昇分を価格に転嫁できず、苦境に立たされている。
【対策】 「頑張る中小企業」を大手が買い叩かない仕組みの徹底。生産性を上げ、賃上げの余力を生み出すための伴走支援。
7. 地域未来戦略:東京一極集中の「歪み」
【問題】 地方に雇用が生まれず、補助金で生き延びるだけの「産業なき自治体」が固定化している。
【対策】 補助金で延命するのではなく、その地域にしかない強みを活かした「稼げる産業拠点」を作る。国が旗振り役となり、民間投資を呼び込む。
「予算請求」の茶番を終わらせるために
これら7つの提言は、財務省から予算を引き出すための「予算要求の戦術」であることは事実です。しかし、政治に求められているのは、予算を配分することではありません。**「誰のための、何を変えるための予算なのか」**という明確な意志です。
これらの提言が単なる「きれいごと」で終わらないためには、高市政権が「どの問題から優先的にメスを入れるのか」という実行力が問われます。
きれいな言葉の裏にある「日本の苦境」を私たちが正しく認識し、それが本当に実行されているかを監視し続けること。それこそが、私たちが政治にできる最大の参加ではないでしょうか。

