高市早苗首相が、7月7日からトルコで開催されるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議への出席を見送る方針を固めたというニュースが入ってきました。当初は出席の方向で調整されていたものの、最終的には「国会日程の都合」という理由で断念を余儀なくされたといいます。
日本の首相によるNATO会議の不参加は、石破茂前首相に続きこれで2年連続となります。このニュースを聞いて、皆様はどう感じられたでしょうか。私は、国益という観点から見て、極めて深刻な機会損失だと危惧しています。
1. なぜ「国会」が外交の壁になるのか
欠席の理由は「国会対応」とされていますが、皮肉なことに、この国会で連日繰り広げられているのは、政策の抜本的な議論ではなく、秘書の「面識」といった重箱の隅をつつくような不毛な追及です。
本来、一国のリーダーは国家の安全保障の最前線に立ち、世界情勢を動かすために全力を尽くすべきです。しかし、現状の国会は、野党による些末なスキャンダル追及の舞台と化しており、その対応に時間を奪われることで、首相が国際舞台に立つ権利すら奪われています。
「有事の際、この内閣は大丈夫なのか」という批判を野党は繰り返しますが、その有事への備えを妨げているのは、皮肉にも彼ら自身が行っている「生産性のない国会審議」なのです。
2. NATO不参加が招く「日本の影響力」の低下
2022年のウクライナ侵攻以降、日本は「欧州とインド太平洋の安全保障は一体不可分である」と世界に向けて高らかに宣言してきました。岸田文雄元首相が3年連続でNATO首脳会議に出席し、築き上げたこの「一体感」は、日本の安全保障政策の柱です。
中国や北朝鮮、そしてロシアが軍事連携を強める中、日本がNATOという巨大な軍事・外交の枠組みの中で声を上げられないことは、単なる「欠席」以上のリスクを孕んでいます。
発言力の喪失: 首脳会議は、対面での信頼構築の場です。代理出席する外相には限界があります。テーブルにトップがいなければ、日本の要求やインド太平洋地域の重要性は、優先順位が下がります。
対中・対露戦略の孤立: 日米同盟だけでは防ぎきれない多国間の脅威に対し、NATOとの多層的な連携は不可欠です。トップの欠席が続けば、日本は「欧州の関心から外れた国」と見なされる恐れがあります。
3. 「外交の高市」を支えきれない国内の歪み
今回のサミットで、高市首相はアジアのエネルギー戦略を国際社会の標準にしようと奔走していました。その勢いをここで削ぐのは、あまりにも惜しいことです。
もし、この国会が真に生産的な議論の場であれば、野党も「サミットには行ってくるべきだ」と背中を押し、短期間の審議で重要事項を採決するなど、外交を支えるための柔軟な対応ができていたはずです。しかし、今の国会は、相手の足を引っ張ることに終始する「消耗戦」の様相を呈しています。
結び:私たちは「劇場」ではなく「国家運営」を求めている
「写真の加工」や「秘書の記憶」を数時間かけて質疑する国会と、世界秩序を左右するNATO首脳会議。どちらが重要かなど、火を見るより明らかです。
日本が真の国際的地位を確立し、欧州とアジアの安全保障を繋ぐハブとして生き残るためには、こうした前近代的な国会運営から脱却しなければなりません。国民が求めているのは、首相の揚げ足取りを見る劇場ではありません。日本の未来を切り拓くための、冷静で重厚な政治です。
今回の欠席が、将来の外交的孤立を招く「転換点」にならないことを切に願います。政治の役割は、些末な疑惑の解明以上に、国益を守り、世界の中で日本の地位を向上させることにあるはずです。
【今日のポイント】
外交的損失: 2年連続の不参加は、NATOにおける日本の発言力と影響力を削ぐ。
国会の異常性: 些末なスキャンダル追及が、外交という「国家の生命線」を妨害している。
真の危機: 「欧州・大西洋とインド太平洋の不可分性」を唱えてきた日本の看板が、揺らぎかねない現状。

